多摩の人と歴史


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その2

大鳥居から欅並木を望む

大国主命をまつった古社大國魂神社は、今でも「六所さま」と土地の古老がいうように、かつては「武蔵国総社六所明神」と呼ばれていた。府中に国府が置かれた頃は祭政一致で、国司が祭司でもあったが、武蔵国内の諸社を巡拝する労を省くため、一カ所に諸社の祭神を集めた六所宮を国府役所のそばに建てたのである。本殿のうち中殿は大國魂大神を中心とした総社であり、東殿は一之宮(多摩市小野神社)、二之宮(あきる野市二宮神社)、三之宮(さいたま市氷川神社)を、西殿は四之宮(秩父市秩父神社)、五之宮(児玉郡金鑚神社)、六之宮(横浜市杉山神社)となっていて、武蔵国内の由緒ある祭神をまとめてまつってある。そして境内の宝物殿には、それぞれのお宮の神輿がおさめられている。

5月の例大祭は国司主催の祭礼の系譜をひくものとされ、5月5日の神輿渡御を中心に、俗に「くらやみまつり」と呼ばれて広く知られている。昭和35年(1960)までは高張提灯をかかげ、深夜の暗闇のなかで行っていたが、最近は風紀、治安の上からも好ましくないという理由で夕方から行われるようになった。

「くらやみまつり」は4月30日の品川沖での潮汲み、海上禊祓(みそぎはらい)式にはじまり、5月2日の神輿につける御鏡を塩と水で磨き清める鏡磨祭、3日は各町の山車が出て祭囃子をはやしたて、夕刻になると新緑に映える欅並木で踊り手たちの舞の披露、夜半になって、その並木で神馬が駆ける競馬式。4日になると一之宮から六之宮、御本社と御霊宮の八基の神輿に綱をかける御綱祭が行われて、いよいよ5日のメインイベントを迎える。この日、神幸の由を奉告する動座祭、神輿渡御の道清めの儀、御霊遷の儀などがあったあと、午後6時、花火を合図に一之宮から順次担ぎ出されて随身門、大鳥居をくぐって旧甲州街道を西に向かい、御旅所まで大太鼓を先払いにして渡御する。神輿が御旅所につくのは午後9時過ぎ、御旅所神事のあと、野口仮屋の儀とやぶさめの儀が行われる。最終日の6日午前4時から還御、鎮座祭がとり行われ、一週間にわたる豪壮な祭の幕はおり、大國魂神社は再びもとの静寂を取り戻す。そして、鬱蒼と神社を包む木立の梢を昔と同じ初夏の風が通りすぎる。(K)


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三浦正人 e-mail : miura@tamahito.com