多摩の人と歴史


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土方歳三資料館所蔵資料
その5

歳三俳句集「豊玉発句集」

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豊玉発句集

歳三が近藤勇ら試衛館の仲間と連れ立ち、浪士隊の一員として上洛する直前、文久3年1月〜2月にかけて歳三自身が詠んだ俳句集。40首の句は、専門家でなくとも決して上作とは言い難いものだが、多摩に住む若者の新鮮な感覚が、そこここに正直に表されている。また、多摩郡谷保村の本田家で習ったと言われる書の筆致は、女性的なほどの繊細さを感じ取る事ができる。「聞き書き新選組」の著者佐藤c(あきら)氏(歳三の姉のぶが嫁いだ佐藤彦五郎の子孫。故人。)によると、「歳三のひとがらをよく人に聞かれるが、いわゆる普通の若者だったと思う、と応えている。」、とあるように、恐らく流行として剣術を習い、尊王攘夷思想をかじり、粋人を気取って書を学び、句を詠んだのではないだろうか。

句集は綴じられて生家に残されていたが、老朽化を避けるため解かれ、掛け軸に貼られて、今でも土方家の家宝として大切に保存されている。

オリジナルの全句は以下の通り。

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裏表なきは君子の扇かな

水音に添(い)てききけり川千鳥

手のひらを硯にやせん春の山

白牡丹月夜月夜に染めてほし

願う事あるかもしらす火取虫

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露のふる先にのほるや稲の花

おもしろき夜着の列や今朝の雪

菜の花のすたれに登る朝日かな

しれば迷ひしなければ迷はぬ恋の道

しれば迷ひしらねば迷ふ法の道

 
人の世のものとは見へぬ桜の花

我年も花に咲れて尚古し

年々に折られて梅のすかた哉

朧ともいはて春立つ年の内

春の花五色までは覚えけり

 
朝茶呑てそちこちすれば霞けり

春の夜はむつかしからぬ噺かな

三日月の水の底照る春の雨

水の北山の南や春の月

横に行足跡はなし朝の雪

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山門を見こして見ゆる春の月

大切な雪は解けけり松の庭

二三輪はつ花たけはとりはやす

玉川に鮎つり来るやひかんかな

春雨や客を返して客に行

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来た人にもらひあくひや春の雨

咲ふりに寒けは見へず梅の花

朝雪の盛りを知しらず伝馬町

岡に居て呑むのも今日の花見哉

梅の花一輪咲てもうめはうめ

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井伊公 ふりなからきゆる雪あり上巳こそ

年礼に出て行空やとんひたこ

春ははるきのふの雪も今日は解

公用に出て行みちや春の月

あはら屋に寝て居てさむし春の月

 
暖かなかき根のそはやいかとほり

今日も今日もたこのうなりや夕けせん

うくひすやはたきの音もつひやめる

武蔵野やつよふ出て来る花見酒

梅の花咲るしたけにさいてちる

その6 「函館新選組袖章」を読む

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三浦正人 e-mail : miura@tamahito.com